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創造の力
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創造の力[196]「新しい世界」という甘い罠20世紀までの世界が行き詰まり、今、世界は大きな転換点を迎えています。これから、幾多の混乱を経て、新しい世の中が実現するでしょう。 たぶん、世界中の多くの方が、多かれ少なかれ、こんな感覚を持っているのではないかと思います。 ちょっとこれは怖いな、と感じる部分もあります。 私自身が、新しい世界を待望していますし、そのために私自身が全力を尽くそうと思います。だからこそ、自戒をこめて、書きます。 今の世の中が悪いので、今の世の中が滅んで、全く別の世の中が始まる。この発想は、おなじみの終末思想です。共産主義も、スピリチュアルなアセンションも、この構図です。 創造のためには、破壊が必要だ。その考えが、暴力的な革命をもたらします。または、破滅的なカタストロフィを期待します。 創造のためには、産みの苦しみが必要であることは間違いないでしょう。しかし、破壊である必要はありません。というか、破壊であってはなりません。 過去と現在を否定し、捨て去るという発想じたいが、とても危険だと思うのです。 どこの国にも、民族にも、どんな共同体にも、それぞれの歴史があり、伝統があり、文化があります。私たちは、その上を生きてきましたし、今また、生きています。 未来は、断絶ではありません。 過去と現在が生じるものです。来るべき未来は、すでに現在が内包しているはずです。現在の中に未来の萌芽があるはずです。歴史は、蓄積です。けっして、突如別のものが入れ替わるわけではありません。 現在の世の中は、矛盾や行き詰まりが噴出しています。だから、これを捨て去って、新しい世の中に期待したくなるのはもっともです。 しかし、それは、甘い罠です。なぜかというと、 1. 過去と現在に学ぼうとしない。 『7つの習慣』がテーマとする「私の中のリーダー(Leader in Me)」は、けっきょく、成功のための手引きのようで、じつは、人の生き様とか、振る舞いとかいう部分だと思います。それは、昔々から、人類が守り伝えてきた高貴なもの。自由と平等を大事にする近代は、そういう古くさいものをあまり大事にしません。 そのことに、大きな危惧を覚えます。 フランス革命、ロシア革命、ナチス、文化大革命、こういった、「過去と断絶した新しい世界づくり」が、いかに悲惨な結果をもたらしたか。私たちは、学ばなければなりません。学ばないなら、今度は私たちが、同じ道を歩かないと言い切れるでしょうか? 貴重な歴史を提供してくださった先人たちの苦難に思いを馳せたいものです。未来は、過去を学び、現在に自ら全力で当たった結果として、生じるものです。 だから、「新しい世界はどのようなものか」という予測や予言は、不謹慎なのかもしれません。「私たちはどのような未来を創りたいのか」なら、正しいでしょう。それは、地道で忍耐のいる道でしょう。それこそが、人の振る舞いであって、生き様なのだと思います。 |